こんにちは。今度こそ1部の感想です。
2部はこっち
前々回の終わりでペア毎に書いていくって言いましたが、普通に時系列に沿って頭からの方が書きやすかったのでごちゃ混ぜになりました。
初演と比較して物言ってる箇所が度々ありますが、初演は映像でしか目にしてないのでそれを念頭においてお願いします。
そういえばここではちゃんと書いてませんでしたが、ゲームは新撰組と虎徹推し*1です。自分でも流石に都合の良すぎる趣味をしてると思うけど刀ミュを知る前からなんですねこれが。今回はキャラ好きの人格が9割9分なので俳優のファンの感想は期待しないでください。
- 「これが新撰組の戦い方です!」/開幕
- 「不愉快だ」/出陣
- 「俺たちも行くぞ」/武州多摩
- 「選ばれたじゃないか!お前らは」/空
- 「俺は鬼にでもなるよ」/入隊
- 「だから新撰組は負けたんだ」/池田屋
- 「あんたらよく似てんよ」/かなしみ
- 「またな」/流山
- 「これが新撰組の戦い方だ!」/板橋
- 「ううん、なんでも」/閉幕
「これが新撰組の戦い方です!」/開幕
初っ端。何回観てもこの冒頭の演出が大好きです。かつての主と共に戦う5振りと「これが新撰組の戦い方です!」の言葉。
これだけで幕末天狼傳という作品が観る価値あるものだって言える。そのくらい好き。
変わらないでくれて嬉しかったなあ
- M1『刀剣乱舞』 ~幕末天狼傳~
恒例だった間奏での1振りずつ決めポーズ&台詞が無くてびっくりしました。
と思ったら今回ここだけでなく徹底的に映像演出が無かったですね。パライソはどうだか知らないけど、葵咲本紀まではOPも含め多少は必ずあったのに。
確かに何かのインタビューで「今まで舞台上にあったものがゴッソリ無くなる」とは言われてましたが、てっきり階段が無くなるのかなと思ってたんですよ。階段は普通にめちゃくちゃあった。多分映像とスクリーンのことだったのかな。
終わり行く時代の先には何があるのだろう
オレは走り抜ける
叶わぬ想いがあるものか
もう何百回も聴いた歌詞だけど、改めて好きだと思いました。幕末の刀の精神が好きだし、それを口にするのが他の誰でもない和泉守兼定ってところも好き。新撰組の刀の中でただ一振り、駆け抜けたその「先」を知っている男なので。
光なんだよな
「不愉快だ」/出陣
開幕すぐ、沖田組と虎徹の手合わせがどっちも大好きです。そして刀ミュの「戦と舞は嘘を吐かない」設定がとにかく好き。さっきから好きしか言ってないですね。
まず沖田組の方。チープな形容しかできませんが、この時の殺陣がスピードも迫力も物凄くて、訓練であっても殺す気で行くことが互いへの誠実だって分かる。お互いには絶対嘘を吐かない2振り。
直後にじゃれ合い始めるところとのギャップも含めて大好きです。
虎徹を心配してるのは土方組ばっかりに見えるけど、沖田組も長曽祢さんと手合わせしようとはするんですよね。躱されますが。
次に虎徹の手合わせなんですがそういう2振りの直後だから余計に撃ち合う気皆無の長曽祢虎徹が際立つ!!なんだお前!!!!
初めっから舐めプされてどうにか本気にさせようと煽ったら躱して勝手に切り上げられて、一撃も堪えてないくせに口だけ褒められる。蜂須賀じゃなくても不愉快って言いたくなるわ。
和泉守なら察せても、身内外には「言葉より行動」は通用しないんだよ………まあまず身内とすらちゃんと向き合おうとしないけど…………
- M2『あかき花 散り紛ふ』
清光って2部にはたくさんあるけど1部でのソロ曲はこれが初めてでしたよね?嬉しかった……
弾ける火花 百花の王
パチパチと鳴く赤き牡丹
激しく燃ゆる 華やか松葉
枝垂れる軌跡 穏やか柳
最後は美しく散り紛う
静か 艶やか ひとひら
散り菊
労咳で弱っていく晩年の姿を見ていた安定にとっての沖田くんが浅葱色の桜なのに対して、その間際までしか目に出来なかった清光にとっての沖田くんが赤く燃える線香花火なのとんでもなくないですか?もう死んだ
同じもの見てるのに同じ道は辿れてない
初演から変わらない本丸シーン、主の話聞く清光の一挙手一投足全てがかわいい!!!!!
凱旋公演中こればっかり言ってましたが、佐藤さんの演じる清光が大好きです。かわいくて徹底的にかっこよくて、少し気怠げで気取った仕草の中に短気さと柄の悪さがチラついて。過去公演を追っていくとどんどん「それ」に進化していくところが見えるように思えて感動する。
こんな言い方しか思いつかなくて申し訳ないけど、本当に理想の加州清光です。ありがとうございます。
結成場面。新撰組の5振りが顔見合わせるなりしてる中一人ずっと背を向けて、微笑みながら主を詰問する蜂須賀。納得出来てないのもそうだけど、絶対不安もあってのことなんだろうなと思う。
でもさっきの手合わせのことを思い返すと、一旦とはいえ長曽祢に嗜められて食い下がるのやめるって偉すぎると思うんだよね。まあ納得は出来てないからあとでやり返すんですけど。
- M3『爪と牙』
歌詞見るとはあ好き………しか言えなくなる
幕末の刀や人間たちの焼け付くような生き急ぎ感を感じる詞のどれを見ても堪らなくなる。
やめろもう走るな立ち止まれって言いたくなるのに、足を止められずに走り抜けるしか出来ないそういうところが好き…………魂の高潔さが好きです…………………
「俺たちも行くぞ」/武州多摩
隊長に任ぜられて気を張ってる蜂須賀と同時に敵襲に気付くのが和泉守ってところが好きです。新撰組の中で統括して判断して指示を出す脳味噌が長曽祢虎徹なら、そのすぐ横で常に情報集めてアンテナ張ってるのが和泉守兼定なんだよなあ…………
さっきも書いたけど今回の殺陣、速度も動きも今までと段違いな気がして大好き。あと「ぉおッ!?とっと……」は多分みんな好き。
堀川が本体ぶっ刺してグチャア!!やるところ、邪道どころの騒ぎじゃないんだよな。それ操られた義経公がやるやつなんだよね*2
それぞれの戦闘で流れる固有BGMがめ〜〜ちゃくちゃ好きなんですよね〜〜〜〜絶対にサントラをくれ
戦闘後、長曽祢に噛み付く蜂須賀に対する和泉守の声の掛け方の話。
初演から演技や演出が変わったシーンはどれも両方大好きなんですが、ここだけはもしかすると明確に再演の演技の方が好きかもしれない。呆れたっていうような台詞なのに絶妙に声色が優しくて、苛立つ蜂須賀の火に油を注がないギリギリのラインで窘めてるように思えました。一見長曽祢の方の肩を持っているように見えるけど、蜂須賀は「弟に危機が及んだら絶対に守る兄」でもあるんですよね。声掛けも言葉選びも上手い……
一瞬逡巡した結果兼さんに着いていく堀川も好きだし、それどころじゃなさそうな安定を視界に入れた上で向こうから言い出すまで自分はどうしたもんかな〜って感じで様子伺ってる清光も好き。
- M4『のら猫二匹』
可愛くて可愛くて何が起こったかと思いましたね!!!!!!!ようやく1部での沖田組デュエットですよ本当に
歌詞に合わせて目をキョロっとさせる清光がかわいすぎるし、真面目に話したのにからかわれてぶすくれてた安定が真意を察したらすぐにやり返すところも大好き……かわいい………
初演では清光が感情表明する場面といえば「こんな思いは俺だけで十分だ」くらいで、一応蜂須賀との対話はあれど誰かにはっきり思いを口に出す場面って他にあんまりなかった。それが安定とのシーンが増えたのシンプルに嬉しいです。あとかわいい。
可愛げなくて つれない態度
本当は甘えたい
喉を鳴らして擦り寄って
撫でられると嬉しくって
ゲーム始めてからこの2振りのことなんて幾度となく考えてたのに、愛されたがりなのは扱いにくい性能の裏返しだってことに初めて思い至りました。
これだからミュージカル刀剣乱舞が好き。
真っ暗で星も無い夜
僕がそばであなたの目となって寄り添いたい
必ずやって来る 夜も闇も
それは変わらない
暗闇できらり
青く光る僕の目
君がよく見上げていたあの星と似ている色
突然二次創作の話をしますが、以前見かけた「刀剣男士の瞳の色は歩んだ歴史の中で一番記憶に残っている色」説が個人的にめちゃくちゃ好きなのでこの歌詞でひっくり返りました。どうでもいい話。
最初M2とこの曲がわざわざ追加された理由は何だろうと思ってたけど、全部最後の展開に持っていくための布石ですね。
歌詞だけ見たら何も詳しいことは言ってないのに、それでもこの2振りの間では全部通じてしまう。考えることも思いも全部そっくりで、言葉が無くても通じ合える沖田組を描くための改変。
初演の幕末天狼傳に比べて、より「『2振り』の話」になったところがとても好きです。
それにしても、「言葉より行動」っていうのはこのくらいの積み重ねてきたものと信頼がある間柄だからこそ成り立つんであってさあ……………(2回目)
- M5『浪士たちの雄叫び』
人間曲が追加されることは予想してたけど可愛すぎてびっくりしませんでした?
尽忠報国の志
お国の為に (お国の為に)
身も心も丈夫であれば
身分は問わない!誰もがこの命を主君に賭けられる
出立だ 京へ
この時はまだ各々が楽しそうに好き勝手に雄叫び上げてる試衛館メンバーが好きです。後のシーンと比べてしまうので尚更……
僕にできるのは見守るだけ
歌うのは安定だけど、この言葉が同時に安定を見守る清光にもそのまんま被っているところが好き。常にシンクロしている2振り。
安定の気持ちを察して置いていかなかったのもあるけど、清光も沖田くんの姿を見ていたい気持ちがどこかにあったんじゃないかなあ。
- M6『僕にお任せ』
タイトル十中八九これだろうなとは思ってましたが、一瞬「任せてよ兼さん!」だったらどうしようかな……とかアホなことが頭を過りました。流石に違った。
こういうこともあるよねきっと
きっとそうだよね
見ててよ兼さん!
次こそやるからも少し大胆に攻めてみせる
僕にお任せ
堀川国広の『胸には熱い闘志を秘めている』を広げてくれた理由の在処のことが心底大好きだったんですが、この曲とM13でなんやかんや揃って世話焼きな土方組を並べてくれた再演の構成も大好きです。
気は回すけどギリギリまで手を出さずにいる和泉守と、強引にでも手立てを打たずにはいられない堀川。どっちも優しいのに器用じゃなくてあべこべで好き………
この時点の蜂須賀、長曽祢の態度は訳がわからないし、5振りの「かつての主」への気持ちも想像が付かないのに、堀川の助言を全部素直に訊いてひとまず受け止められるの本当にいい子すぎると思う。
- M7『かっぽれ ~天狼星の下/長の背中~』
「続きを詠めということか……!?」まじで何?
アドリブお笑いパートの宴会シーンですが、蜂須賀にとってはすごく大きいターニングポイントだったと思うんですよね。
さっきの堀川の話で憧れの切っ掛けが芽生えたところにこの宴会で、ようやく5振りと一緒にいることを楽しんで、任務に入ってから初めて笑うことができた。そりゃあその後酒好きキャラにもなると思う。*3
場転時、セットに掴まって客席に手振る堀川観ながら「Dキャストかな……」って考えてました。
「選ばれたじゃないか!お前らは」/空
「どうしたの?……お前まさか!」
「頼む清光!見逃してくれ!」
「出来るわけないだろ!?」
ここまで主語ゼロ。やっぱり何も言ってないのに伝わる、伝わっちゃう沖田組なんだよなあ。他に誰もいなくてずっと2振りだけで喋ってたら、端折りすぎてお互い以外に全然通じない会話してそうな気がする。
身内だからこそ4:1で反対する新撰組の刀と、馴染めたと思った矢先の言い合いに何も口を出せない蜂須賀。直前が気の抜けたシーンだっただけに、一気にヒリつく空気の温度差を感じるのが好きでした。
あと初演見たときから長曽祢虎徹の一声だけで安定追いかける和泉守兼定が好きで好きで!!!!!!局長・副長刀の連携って意味でもそうだし、上2振りが身内の揉め事に慣れてる感もめちゃめちゃ刺さって困る。はあ好き
心配する側として喧嘩してたはずなのに、言われたくなかったところ突かれて反射的に対等にブチ切れちゃう清光も好き。
- M8『空は知らない~選ばれぬ者』
選ばれることを選べない
選ばれぬことを選べない僕たちだけじゃない
あの人たちだって
時代に選ばれずに死んでいった
とても正直に言うと、この曲が最初一番受け入れ難かったです。
ここまではまだ曲が追加されただけだと思えば受け止められる、理由の在処がなくなったのは悲しいけどそれだけならなんとか、と思っていたところに、よりによってこのシーンが明確に新しい曲へすげ変わってしまったので。
物凄くいい曲だってことが頭では分かるのに、「選ばれぬ者」と同じ歌詞を知らないメロディに乗せて歌っている光景がどうしても呑み込めなくて、大好きなこのシーンを見るのがしんどかった。
まあその辺のメンヘラ語りはもうしたので省きます。今は新曲の中でこれが一番好き。極端。
同じ空見上げても
同じ道辿れるわけじゃない
同じ空の下でこんなにもすれ違うあの日の空を一緒に見たかった
そばに寄り添い
共に戦いたかったんだ
すれ違っても別れてもなお考えてることはそっくりな清光と安定がさ……
目まぐるしく回りながらセットの形を変えていく演出が、まるで歴史とか、想いとかの大きい渦に6振りが飲み込まれていくようで、刀ミュの過去作の中でも一際群像劇的な側面の強い幕末天狼傳っていう物語の象徴みたいに感じました。
出来ることは胸を張ること
オレたちはおんなじだけど違う
みんな違うけどおんなじだから
金管が強く出たインストでどうしても結びの響始まりの音を思い出して、メロディが痛くて苦しくて胸を掻き毟りたくなる。
互いの持ってるものをぶつけ合うような初演の「選ばれぬ者」から、言葉に出来ないものや呑み込んだものが混ざり合うような楽曲に変わったなあと思います。主観ですが。
空に知られぬ雪
散り果てた命 まって まって
空知らぬ雨が込み上げてきても
今はただ空を見上げるだけ
初演では「選びたい」という、どちらかと言えば前向きな意志で締め括られる曲だったのに対して、「選べない」ことへの悲観が強く出た曲に差し替わり、より幕末の刀が共通で抱える陰の部分にフォーカスするシーンになったと思いました。
この幕末天狼傳一作の中だけで、「見上げる」っていうモチーフの印象が二転三転するところも好き。
今回前にも増して描写が多くなった幕末天狼傳においての「空」、「どうにもならないもの」の象徴だったのかなと思います。
桜を闇に沈める夜。星の光を塗りつぶす朝。
導きを隠す、降りしきる雨。
決して手は届かない、それでも忘れられない、慕わしい浅葱色。
清光と蜂須賀の対話。
阿津賀志で石切丸と話して、初めて「心」について考え始めた清光が遂に実感を持つ、ここのシーンがすごく好きです。すぐに言い当てられる蜂須賀の方も、きっと今までに何度もそれについて考えたことがあったんだろうなと思う。
喜びも苛立ちも苦しみもないままの方がきっと楽だったのに、「手放したい」とは決して言わない刀ミュの男士たちが大好き。
刀とそれに付随する物語という「心」の塊が無ければ存在し得なかった彼らが「心」を肯定し続けてくれることは、一方的にそれらを生んだ人間への肯定だと思う。
- M9『沈む星』
初演ではラストシーンになって初めて堀川が口にしていた「目に見えない小さな星」の概念が、ここで先んじて出されるようになりましたね。
海の底に沈むように
空の青に沈んでいく
朝の日が溶かしていく星の輪郭
だがそこに確かにあるのだから
きっと目を凝らせば見えるはず
後に歌われるリプライズも合わせてこの曲が本当に大好きです。歌詞も場面もだけどなんかもう……全部が……
蜂須賀には他の5振りのように闇夜を照らす狼だった歴史はないかもしれないけど、それでも一つの星であることは確かなんですよね…………
新撰組への潜入を命じる場面。やっぱり心配だし、キツい思いさせたくないけど、自分が頭下げてまで蜂須賀に頼んだ手前嬉しそうな安定に何も言えない清光が好きです。
そして「主には何か考えがあって〜」の反撃をここぞとばかりにかます蜂須賀も好き。他に向いてる刀がいるって言ったのに隊長から下がらせなかったのは長曽祢虎徹だもんね……
「俺は鬼にでもなるよ」/入隊
「うむーーーー!!!」が無くなってなかったのめっちゃ嬉しくてニコニコしました。2人がわちゃわちゃやってる間ずっと上手で謎ポーズ取ってる近藤さん、何回見ても意味がわからん。
その微笑ましいシーンと直後のやり取りとの落差が酷い。互いが互いの生きる意味だったのに、なんで最後には互いのために死んでいくことになるんですか?
- M10『浪士たちの咆哮』
狼の遠吠え 天に響き渡れ
縄張りを示し 遠き仲間を呼び
共に生きるものたちを繋げ
初見の時は沖田くんのソロがやけに多くなったな〜って思ってたんですが、ラストシーンが変わったからそこに向けて感情の流れも変える必要があったんですね。
沖田くん自身の意思で板橋に向かわなきゃいけなくなったから、その展開に持っていくため初演以上に沖田くんの意志を追ってもらう必要があったんだな。ということが複数回見てやっと分かりました。
手合わせしてる時の安定が嬉しそうで嬉しそうで、このシーンになるたびぼろぼろ涙が止まらなくなる。まだここからなのに。
初めて沖田くんと言葉を交わせて、刃を交えられてどれだけ嬉しかっただろうなあ。
沖田くんの「これまで」の優しい言い方がすごく好きです。栩原さんの稽古の付け方は何枚も上手の師範って感じだったけど、定本くんは至極対等に奥沢くんとの手合わせを楽しんでるように見えました。
清光と蜂須賀、1度目の対話の後にソロで出された「小さな星」の概念を受けて、ここで初めて天狼星の名前が出る。
冒頭の隊長交代では納得しつつ複雑な気持ちを隠してた清光が、穏やかに蜂須賀と話してるっていうのが良すぎる。2度目で蜂須賀からの呼び方が「加州清光」から「清光」になってるところもめちゃくちゃ好きです。石切丸と一緒じゃんね……
鍛錬しながらで一見片手間に相手してるように見えるけど、「戦は嘘を吐かない」を踏まえるなら、きっと刀を振るいながら話すことは蜂須賀と違って素直じゃない清光なりの誠実なんだと思う。
その刀を止めて言う「俺に斬らせてくれ」「頼む」の言い方が、観るたび違っていて毎回すごく楽しみでした。*4
主に対してのムっとしちゃうよね、っていう言葉を聞いて、考えたこともなかったって顔をする蜂須賀。
新撰組の5振りと順番に向き合うシーンのたびにハッとした表情をしていて、きっとこの任務の間目から鱗が落ちっぱなしなんだと思う。自分とはまるで違う価値観に触れて、じわじわと憧れを形にしていく姿が大好き。
ところで、清光の「間違ったら、間違ったところからまたやり直せば良い」って台詞が初演からずっと気になってます。もちろん蜂須賀が荷を下ろす切っ掛けになるいいシーンではあるんですけど、世界観が世界観なので。
直後に安定の「そんなことしたら僕は歴史修正主義者と何も変わらない」が来るし、まあわざとなんだろうなと思いますが……
ステとミュはそろそろやりそうだけど、ゲームでこの辺触れる気あるんですかね。
そして全然関係ないですが刀ミュの堀川が「安定さん」「清光さん」って呼ぶのがめちゃめちゃ好きです。
これが花丸だと「大和守さん」「加州さん」なんですよ。
「だから新撰組は負けたんだ」/池田屋
- M11『士の心 雲より高く』
高く高く
侍の心
刻め刻め
今宵こそ吠えろ 天に吠えろ
雄叫び上げろよ
京に発つときは自由に雄叫びあげてた浪士たちが、この時点で近藤さんの手振りでピタッと動きを止めて隊列を整える狼の群れになってるのが好きすぎる。
爪と牙の6振りもそうだったけど、今回陣形組むような振付がすごく多くて、人も刀も統率の取れた戦闘集団っていう印象を受けました。好き。
食い下がる土方さんに対する、近藤さんの「命令だ」がとにかく好きです。蜂須賀の「命令には従ってもらう!」とは全然違うんですよね……
定本くんの沖田くんは、病を見透かされていたことに「敵わないなあ!」って笑って言えない。長の背中の大きさが歯痒くて仕方ないっていうような、あの言い方がとても好きです。
これは多分物理的なキャストの年齢もあると思いますが、初演での栩原さんの沖田くんと沖田組はどこか"親と雛"って印象を受けていました。
それが定本くんの沖田くんは、2振りを合わせた原型というか。まさに物語を分けあう前の"基の姿"みたいに思えた。髪型も清光と安定のハイブリッドになったし。
常にどこか切羽詰まったようなギリギリ感はどっちの沖田くんもっていうか、幕末の話に出てくる全員に共通な魅力ではあるんですが。そんな再演のまだ幼さを残した沖田くんが好きです。
池田屋突入してすぐの回想が大好きだし、掌に唾吹き掛ける和泉守見るたび好〜〜〜〜〜〜〜!!!!になる。仕草が輩なんだよな
ついでに土方さんが同じことしてる場面見るとエモーショナルにやられる。ていうか和泉守兼定の柄が悪いシーンは大体ずっと好き泣泣泣泣になってます。
永倉くんと藤堂くんの辺りの、安定が介入してることでほんの少しずつ歴史にズレが生じてる演出がとても好き。
- M12『浅葱色の桜』
冒頭もだけど、沖田くんのあの派手な喀血がなくなったの寂しかった。幕末天狼傳の見どころの一つだと思っていたので。
恐らく裏での接触を減らさなきゃならなかったんだと思います。知らんけど。
あの星に雄叫びは届いただろうか
浅葱色の桜は咲き誇れただろうか
今回主に人間組から「雄叫び」ってワードがすごく推されるようになってましたね。
はじめは全体通して狼要素増やしてるしその一環かな〜と思ってたんですが、ふと決戦の鬨を引いた上でのことだったらどうしよと思って死にました。どれだけ叫んでもいつか声は枯れ果てるってか
でも必ずやってくる
夜も闇も
それは変わらない闇夜に咲く浅葱桜
散る時を待つ浅葱桜
短く果てても
儚く消えても
赤い線香花火と浅葱の桜。清光にとっての沖田くんは急速に咲いて消えていく代わりに闇を照らした火花だったのに対して、安定にとっての沖田くんはじわじわと散って闇に沈んでいく花びらだった。
それは誰かの未知なる道
歩んだのは君だから
初演では辛くても沖田くんを救いたい想いを吹っ切った安定だけど、再演では全然吹っ切れてないように見えました。もちろんここで薬を渡すことは踏み留まるけど、何とかしたいという気持ちまでが消せたわけではない。どうなんでしょうね。
あまり自信はないですが、恐らく安定極の手紙を踏まえた上でこういう風になったのかなと思いました。「忘れることにする」とか言って一つも沖田くんの影を消せてないあの極が、今後帰還する時に向けての布石なのかなあと。
まあそれがどっちでも、ここで安定が自分に勝って沖田くんの生き様を守ったことには変わりないんですよね。
この時清光が安定になんて声を掛けようとしたのか、ずっと考えてます。まったく答えがわからない。
でもきっと、いつもの2振りならせいぜい「気は済んだか?」だけでもう話は終わっていたはずで、そんな風にわざわざ何かを弁明しようとするのは「らしくないこと」で、たまたまだ!って笑い合えるのが正解だったんですよね。
選ばれたものと選ばれなかったものの間に差なんてない。何かが違えば逆の立場だったはずで、今までもこれからも自分たちは対等だってことを共有できるのが、この2振りにとっての救いだったのかなと思う。
自分が下した決定の末に傷付いた安定の姿を目の当たりにして、また焦って、自信を無くす蜂須賀。いくら「間違えてもやり直せる」って言われたとしても、その間違いで傷付くのが自分じゃなくて仲間だってなったらね……
そうして蜂須賀が余裕を失ったときに咄嗟に選んだのが、「隊長の自分を含む、誰が傷付いても進み続ける」っていう"新撰組の戦い方"で。それを止めた長曽祢は正しいけど、やっぱり言葉が足りない。
蜂須賀なりに理解しようとして歩み寄って憧れて、だからこそ縋ったのに、張本人にそんなこと言われたら何も言えなくなる。
怒り、困惑、悲しみ、罪悪感、情けなさとか全部がぐちゃぐちゃになったような「不愉快だ!」って怒号。冒頭で同じ台詞を言った時は苛立ちしかなかったのに。
ひどい男なんだよね
ところで清光と長曽祢の裏庭回想が無くなってることに閉幕してから気付きました(ポンコツ)。新しい脚本にはそぐわないもんね……
でもあの回想大好きなんだよな……
「あんたらよく似てんよ」/かなしみ
- M13『沈んだ星』
初め・中・終わりの全員曲しかなかった和泉守兼定に歌唱楽曲が追加されたのがもーーーーーーーーー嬉しくて嬉しくて嬉しくてどうしたらいいですか?しかも実質ソロなんですよね はあ好き 急に偏差値3になるな
和泉守が入ってくるタイミングでインストに加わる尺八が完全に風の音なのでとてもずるい。くるしい 好き
それは入室伹清風だし結びの響始まりの音じゃないですか
日に沈んだ星の輪郭
だがそこに必ずあると信じて
目を凝らしてみたが見えないまま
見えないもんは見えねえんだよ
それは仕方ねえ
それでも見たいなら
潜れよ 海の底に
飛び込めよ 空の青に
朝が来るのを怖がるな
新撰組の5振りの中でも一際根明に見える和泉守兼定が「見えないもんは見えねえ」ってある種諦めみたいな言葉をサラッと口にするところ、なんかもう好きとかじゃなくてどうしたらいいかわからない。選ばれぬ者の「今更何かが変わるわけじゃねえ」も含めて。
ただ在るものは無理に変えようとすることも嘆くこともせず在るままに受け止めて、じゃあてめえはどうする?っていうものの考え方をする刀なんだなと思います。
この台詞は本気というよりカマ掛けに近いけど、蜂須賀が飾られていたことを本人に向かって持ち出す和泉守だけが、この6振りの中で唯一『戦い人を斬る』と『飾られ愛でられる』の両方を経験した刀っていうところも好きです。
闇夜に光があることを求めている、言い換えれば夜が来るのを恐れている沖田組と長曽祢虎徹*5に対して、朝が来るのを恐れる蜂須賀虎徹と和泉守兼定。
前者は刀や新撰組にとって不遇の時代が来るのが怖いけど、この2振りは、和泉守兼定はその不遇の時代すら終わってしまうことを知ってるんですよね。そんな結びの響始まりの音への繋げ方をするな
「強え奴は、強くならざるを得なかったから強えんだ」
後の作品にもテーマとして受け継がれることになるこの台詞。今回の和泉守兼定はほとんど土方歳三について語ることはないのに、この時の表情と声色だけで眩しさとか憧れとか思慕とか色んなものが透けて見える。
このシーンを観ていて改めて感じたことですが、ミュージカル刀剣乱舞の真っ直ぐすぎる和泉守兼定が好きです。
結びの響始まりの音で長曽祢に主を失うのがどんな気持ちだったか訊きに行くシーンを初めて見たときは流石にそれ訊く!?と思ったけど、蜂須賀に「だったら訊いてみりゃいいじゃねえか!!」って言うこの和泉守なら絶対やるんですよね。
何も繕わないところ、真摯に訊けば必ず真摯に応えてもらえるって信じ切ってるところ。そういう真っ直ぐすぎるところが大好きです。平安の刀は見習え
そしてどうにも形容できないんですが、再演で和泉守の雰囲気が丸々一段くらい大人びたように感じるの……伝わりますか……?演じる有澤さん自身4年歳を重ねたわけだし、声の出どころが深くなった、表情も演技も成熟した、その辺が理由なんだと思いますが……。
初演では面倒見いいけど若いが故に純粋であれる和泉守兼定って印象だったのが、大人びて何もかも呑み込んだ、全部分かった上でしなやかな強さを持ったかっこいい男になったと思いました。大好きです。
- M14『あわせ鏡』
目を凝らしても見えない星
暗くてとても小さい
追いかける背中
肩並べる隣
己を映すあわせ鏡
ここでゆめのあと拾ってくるのずるいんだよね
つっけんどんなこと言っておいて何だかんだ同じように世話焼いちゃう和泉守兼定も、それが嬉しい堀川国広も好きです。
この演目においてはサポート側で沖田組と虎徹に比べたら描写少ないのに、その土方組にもきっちり『2振り』の種を蒔いていくところが……好き…………
堀川って本当に「堀川国広」であったか確証に足るものって何もなくて、作り手も姿も存在すらわからない中、「土方歳三が和泉守兼定と共に振るった脇差」という概念だけを依代にそこに立ってるわけで。初めに自分を『見えない星』って称したのは蜂須賀だったけど、堀川も、ついでに言うと和泉守以外の新撰組の刀全員もまた、歴史上では『暗くて見えない星』なんですよね。
でも相棒の、自分を使った人の輝きが側にあれば、共に一つの星として輝ける。
そして新撰組の刀の中でただ1振り現存する和泉守兼定が何の衒いもなく4振りを身内扱いしてくれていること、余りにも大きい。
やっぱり和泉守兼定って光なんだよな……
「またな」/流山
- M15『夜の海 星冴ゆる』
勝色の海
あの人が見上げた碧血
星冴ゆる夜
あの人に誓う丹心
初め見たときは「長曽祢虎徹が舞う」っていうことにすごく困惑して、えっ何……?平安刀で定番の演出になったからって幕末にも捻じ込んできたの……?と思いましたが、冷静になったら別にそこまで意外なことじゃありませんでした。
嘘の無い本心を『誰かに見せる』のが刀ミュの舞だと思い込んでた考えの方が間違いで、誰にも見せるつもりはなかったとしても舞は舞。近藤さんの歌に乗せて舞う長曽祢虎徹、秘めた言葉だらけだけど何一つ嘘じゃないんだもんね。
鉄扇携えてるのが良い。
己が信じればそれが真
言葉を為せばそれが誠この刀の名は虎徹
我が手に馴染む愛刀
血に飢えたのはお前だったか俺だったか
この刀の名は虎徹
我が手に馴染む愛刀
宿るは真の武士魂
「お前だったか俺だったか」がすごく好きです。自然に、勝手にそうなったわけではなく、『長曽祢虎徹』を形作ったのはやっぱり近藤勇だし、刀の歴史は人が作るんだなという気がする。
近藤さんと土方さんの対話ですが、もう如何とも言い難い。
今回、土方さんが詰め寄ることが出来なくなって印象はまるで変わりましたが、どっちにしても近藤さんのことをひどい男だ……と思います。
胸倉掴んで吠えても折れてくれない初演、勝手に一線引いてもう越えさせてくれない再演、どっちもひどい。「新撰組副長、土方歳三」の声で「トシはトシだよ」って言ったくせに!!!!!!ってなる。
守らせてもくれない男が一番ひどいと思う。先に死なれたら耐えられないのはこっちだって同じなのに何なんだよ
「駆け抜けろ」と言われてしまったから、もう土方歳三は立ちどまれない。「刃が折れても、隊長が死んでも前進する」、ぼろぼろになっても、腱が切れても立ち止まらずに駆け抜けたその先に結びの響始まりの音が控えてると思うと本当にミュージカル刀剣乱舞のことが許せない
祈りと呪いの構図をやめろ
最初は多分疎外感すら持ってた蜂須賀が、一振りずつ新選組の刀に向き合って成長していく。堀川がきっかけを作って、清光に励まされて、安定を見て自信無くして、和泉守に発破かけられて、
最後の最後に「長曽祢虎徹と近藤勇」を目の当たりにして、じわじわと築いてきた憧れが確固たるものに変わる。
その構図が綺麗で大好きです。
板橋への最後の出陣。
5振りが言いにくそうにしてるのに、近藤勇を斬ることを「それだけのことだ」って先に行っちゃう長曽祢虎徹がかつての主とまるで同じで苦しいし悔しい。
刀剣男士の悲しさと強さと優しさの話いずれ書こうと思ってます。
「これが新撰組の戦い方だ!」/板橋
- M16『浪士たちの咆哮 リプライズ』
僕はただその声を
力の限り轟かせたかった
ただそれだけ
頭からずっと長曽祢虎徹と近藤さんに許せない許せない言ってますが、まあ一番許せないのはこの刀なんですね。よきかなじゃねえんだけど……
お前何わろとんねん!!!!沖田くん死にかけとんやぞ!!!!!!なる。
僕に
俺に
できるのは見守るだけなのか?
のら猫の曲を見た時点で察するべきだった。
再演が決まった時から、阿津賀志の巴里での変化とかも考えて黒猫の展開は無くなるものだと思ってました。こういう使い方してくると思わなかった。
時系列で言うと違うけど、阿津賀志→つはものと同じ構図で初演→再演だったんですよね。
今回の改変で遡行軍に唆され操られて強制的に板橋に向かわせられ、沖田くんの死に際が陵辱されることはなくなった。自分の意思で近藤さんの元に向かうことができたのは、つはもので語られた「救い」と同じ。まあどっかの刀が唆してるのは変わらないんですけど……
特に多かった沖田組関連の演出・脚本変更点も、全部ここから逆算されたものでした。
沖田くんへの未練を振り切れてない安定。自分が知らない沖田くんの姿に動揺する清光。
だから2人とも救いたいと思っちゃった。どうにもならなくても、ただ「あの日の空を一緒に見たかった」。
何も出来なくてもそばに居させてあげたいと思っちゃったんだなあ
「心」が痛くて、無理矢理押さえ込むみたいに体を折る清光が苦しかった。最初は笑みすら浮かべてるところが、どれだけ不器用なんだこの刀はと思いました。
脈絡のない質問と嗚咽混じりに呼んだ名前、冒頭から繰り返してきた、『何も語らなくても全部分かり合える2振り』の描写がここで実を結ぶ。この言葉にしない提案は、多分自分のわがままを覚悟と一緒に受け入れてくれた相棒への恩返し。
「沖田くんが大変な時にそばにいたかった」気持ちは痛いくらいわかる、憎まれ口ばっかりで素直じゃないけど誰より通じ合ってる加州清光と大和守安定が愛しくて苦しい。
共犯で実行に移した一世一代の悪戯。2振りもそれが正しくはないって分かってるからごめん、って言うし、堀川は察して見逃す。
ここが堀川なのがまためちゃくちゃ良いと思います。長曽祢虎徹と和泉守兼定は多分「気持ちはわかる」って言ってあげられないんだよね。分かったとしても。
それにしても幕末天狼傳全編、言葉にしなくても全部伝わる沖田組・伝えたいことは全部言葉にする土方組に対して、言ってくれなきゃ分からない蜂須賀虎徹vs言葉より行動の長曽祢虎徹(伝わるとは言ってない)(伝わらなかったらそれはそれでと思ってるから余計タチが悪い)なのひどい話だと思います。
今回の再演の目的、この「黒猫に代わる三日月描写の追加」は確定として、「菊一文字描写の撤回」が含まれるのかどうかですね。年明け辺り清光特命が来てみないとわかりませんが。
私個人としてはこの予想は外れたらいいなあと思ってるけど、最近の刀剣乱舞くんを見ている感じだとどうやらそれは叶わなそうな気がします。
あと巴里で清光が咳き込んでたのはいつ回収されるんだろう。
板橋に4振りが駆けつける、このシーンでM15のインスト流してるのが許せないし、長曽祢虎徹が近藤さんを見て表情が崩れる瞬間に「この刀の名は虎徹」のメロディが当たるのが永遠に許せませんね。
そして飛び出して行った長曽祢さんを追う蜂須賀が「長曽祢!!」って叫ん
ながそねって呼んだ!!!!!!!!!!!!!!(はい)
終始「あの人」としか呼べない、呼ばないのに。たった2回だけその名前を使う。*6作り手が源清麿でも、ルーツを見た上で確かにこの男は「長曽祢虎徹」であるのだと。
それを言葉に出さない!!!!!
あんなに素直なくせにそこは出さない!!!!!!
ついでに相手は必死になってる最中だからそのことにも気づかない!!!!!!!!
やっぱり似てるんですよこの2振り。なんなんだよ
近藤さんの首が落とされる瞬間唇を引き結んで目を閉じる長曽祢虎徹と、それを邪魔されて悲しさとか怒りとか何もかもが一瞬漏れ出す「クッ…ソォ……ッッ!!」が良い。遅いんだよね本音が漏れるのが。
大幅に追加された戦闘シーンでも、やっぱりこの清光、安定、沖田くんが揃う最後の殺陣が大好きです。さっきも書いた通り、決して褒められたことしてないって分かってるけど、それぞれが自分の意志でこうすることを選んで、一緒に刀を振れていることが。
とっくに血塗れでぼろぼろなのに、なお三段突きを撃てる沖田総司がまさしく稀代の天才剣士。
どうしても近藤さんを守りたくて、それだけで沖田くんは血反吐吐きながらここまで来たのにやっぱり助けさせてくれない。余りにひどくて、かっこよくて許せない。
それに「待ちぼうけだ」って言って笑いあったのに、割とすぐに揃っちゃうんだよなあ。なんでこんなひどいことするんだろう。
他の部分と違って本当にしょうがないことなんだけど、土方さんが近藤さんに縋り付けない。近藤さんが沖田くんを抱き締められない。
それだけが悔しくてやっぱり許せないですね。分かってるんだけど。もちろんさっき言ったように近付かない演出でも素晴らしかったし大好きなのも本当なんですが。
それでもやっぱり、こんな現実のことなんてどうでもいいから、家族みたいに兄弟みたいに近い距離で感情ぶつけ合う新撰組が観たかったなあと思います。どうにもならないんだけどさ。
何度も繰り返された「新撰組の戦い方」、その本質は傷付いた仲間を諦めることでも、自己犠牲を厭わないことでも、ただなりふり構わず斬り続けることでもない。
戦い方も、命令も、新撰組のそれは『信じること』。
必ず助けに来てくれる、会いに来てくれる。たとえ間に合わなくても、自分の命も志も決して無駄にしないと言い切れる相手がいる。
阿津賀志山異聞から作品を越えて扱われた新撰組の刀たちの命題が、近藤勇の背中をもって落とし所を見つけるのがすごく好き。
「みなくたっていいんだ」
これを言える蜂須賀虎徹がこの部隊にいたこと。
"仲の良すぎる"新撰組刀の中に一振り放り込まれて編成から長らく疎外感を拭い切れなかった蜂須賀だけど、その蜂須賀だけがここで長曽祢虎徹を殴ることができる。
どれだけ近くにいても、新撰組の4振りは言えないんですよね。長曽祢虎徹にとっての4振りは、近藤勇にとっての土方歳三と沖田総司なので。
歯痒く思っても、沖田組と土方組にはその抱えた物ごと、抱え込んでいるって事実ごと支えるしかできない。難しい顔で考え込む長曽祢を叱咤して、共に前を向き続けることしか。
下ろすつもりのなかった重荷をふんだくられて一度崩れた長曽祢虎徹が、姿勢を正し、息を整え、そっと目を伏せる。
ずっと正面から向き合わなかった長曽祢虎徹がようやく蜂須賀の言葉を受け止めた事実が大好きだし、変わってなお揺るがない高潔さを美しいと思います。
「ううん、なんでも」/閉幕
冒頭と変わらず手合わせしてる、大きな任務を乗り越えても何も変わらない沖田組。
ようやくまともに手合わせできるようになった、少しだけ関係の変わった虎徹。
それを見て笑い合って、次の物語に向かう土方組。
いつかまた幕末の物語が描かれることがあったら、和泉守兼定と堀川国広が手合わせするところも見られると良いなあ。
- M17『ひとひらの風』
それぞれのあわせ鏡の在り方が愛しすぎて感情がめちゃくちゃになる。
走り回ってじゃれ合う清光と安定。
兼さんの隣をキープする国広と怪訝がりながら受け入れる兼さん。
何も言わず背中合わせのまま並び立つ蜂須賀と長曽祢。
はあ好き…………………
個人的にこの曲って刀から主への思慕と憧憬の歌であると同時に、主たち自身の追憶と、全てが終わった後の安寧の日々の歌でもあると思ってるんですけど。
そこで描かれるのは侍になる夢は叶えたはずなのにずっと苦しそうだった時代ではなく、ただ幸せそうに夢見て笑ってた日の姿で、その事実にどうしようもなくなる。それを遠くから想う6振りの表情も。
もし幕末天狼傳に瑠璃色の空とか序章みたいな「幕引き曲」があったらどんなだっただろうって考えたことがあるんですが、やっぱり幕末天狼傳のED曲がひとひらの風で良かったなと思います。
「トシ」「総司」
「かっちゃん」
「近藤さん」「土方さん」
「沖田くん」
「清光」「安定」
「兼さん」「国広」
「蜂須賀」「『長曽祢』」
大切に大切に、お互いの名前を呼ぶ幕末天狼傳が大好きです。この6振りにとって、名前はただの名前じゃないから。
蜂須賀を除いた5振りは号を持たない。和泉守以外は本当に「そう」だったかすら確かじゃない。百年単位の長い刃生の中で、たった数年の煌めくような記憶だけが彼らを形作っている。呼んだ名前に込められてるものは名前だけじゃなくて、まるで互いが互いであることの確認のような。余計な言葉なんて何もなくても、名前を呼んだだけで全部伝わる沖田組と土方組。
それに対するのが虎徹の2振りだけど、ギリギリまで名前を呼べないのは腹の内を明かさない長曽祢さんじゃなくて蜂須賀の方。
仕方ないんですけどね。「長曽祢虎徹」って名前は蜂須賀にとっても重いから。蜂須賀は自分に『蜂須賀家の長曽祢虎徹』しかないと思ってるから。何が目的なのかわからない相手においそれと認められるものじゃない。
でも蜂須賀がちゃんと「蜂須賀虎徹」であることは、自分を「沈んだ星」って言った彼が紛れもなく、選ばれた自分だけの物語を持ってることの証明なんですよね……
一見騒がしくて治安が悪くて明るく眩しく見えるけど、全員がその中にどうしようもない悲しみと諦念を抱え持っている。でも断じてその暗さが本質というわけではなくて、本当の本当に核の部分には決して下を向かない美しさとヒリヒリするような強さがある。
そういう幕末の刀たちのことを、まさに星のようだと思います。
しかしこうやって書いてるとまじで早く本公演で虎徹3振り揃って欲しいーーーー!!2021年春新作天保江戸出陣の情報解禁まだですか!!!??
それぞれでも完成してる物語が、3振り揃うことで一つの意味を為す虎徹のキャラメイクが大好きなんですよ。
*7
ミュージカル刀剣乱舞がそこをどんな風に描くのか早く見てみたい。パライソも観られてないからこの本丸にいるのがどんな浦島くんなのかもまだ知らないし。
え!?音曲祭めちゃくちゃ楽しみになってきたな!!?絶対に虎徹3振りのシーンあってほしい。1月9日が待ち遠しいです。
今ここまで書き終わって文中何回「好き」って言ったか数えてみました。81回だそうです。
台詞、音楽のひとつひとつが全部好きだし、この6人が演じてくれるこの6振りが好きだし、この物語が好きです。
幕末天狼傳の何もかもが大好きです。
こうして考えれば考えるほど、初演のことも再演のこともどんどん愛しくなっていく。本当にすごいことだと思う。
初日に見た時は、曲もそれを入れるタイミングも脚本演出も大きく変わったことで、心底大好きであれこそが完璧だと思っていた幕末天狼傳の雰囲気とか展開とかバランスとかが全部ばらばらに崩れてしまったように感じました。
もっと大事なところがあるのになんでそんなところに曲入れるの?って言ってたし、あの直接的すぎるほど直接的な詞が好きだったのに、そんな暗喩も形容もいらないよ!って言ってたし、どうして6振りと3人が必死こいて落とし所を見つけた物語に今更介入するのか分からなかった。
こうしてちゃんと考えた今振り返ると、私が初演の方しか向かずに重ならない部分の形ばかりなぞってたから、それを齟齬だと思い違えて勝手に落ち込んでただけだなと思います。
終盤の演出置換っていう目的がまずあって、それを前提に全部一から置き直した。そうして出来上がったものはバランス悪いなんてことひとつもなかったし、幕末天狼傳は何も変わってなかった。
そう気付いてやっとこの再演のことを心から好きになれました。
もうすぐ1ヶ月になっちゃうけど、本当に大千秋楽迎えられて良かったなあ。
これ以上ないくらい泣いたし、これ以上ないくらい幸せでした。きっと何年経っても忘れられない秋になるんだろうな。
やっぱり私はミュージカル刀剣乱舞に運命の恋してる!🥳今年はもう何もなさそうだけど、きっと来年も刀ミュのおかげでハッピーです!!!
最高の秋をありがとうございました。だいすきだよ!
おしまい